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第三者の権利の主張適格(憲法)

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昨日のゼミにおいて、俺の担当判例の一つに第三者所有物没収事件があったため、その報告レジュメを掲載する。

第1、始めに 
 論文対策という観点から、判例分析というよりも第三者の権利の主張適格という新司法試験頻出論点の整理を行うことにした。
 本文を読む前に、木村草太先生のブログにおける第三者の違憲主張に関する論点のまとめに関する記事を先にお読み下さい。
 木村先生のブログの分析が非常に分かりやすかった。
 だが、H20,21,23新司法試験の出題趣旨や採点実感で書かれている第三者の権利の主張適格と問題のとらえは、どうも木村先生のとらえ方と違うように感じたので、調査官解説等を参照しながら、この論点について分析してみました。
 試験対策的には、最後に掲載した論パの部分理解しておけば足りるのではないかと思う。

第2、木村草太先生による本判決の分析とその検討
1、木村草太先生による本判決の分析 
木村説は、第三者の権利の主張適格について、5つの類型に分類しており、本判決は、《その2》「国に対し、(自分ではなく)第三者に対するある種の取り扱いを要求できる憲法上の 権利があるか? 」という分類に関する論点であるとする。
 そして、本判決は第三者の権利を行使することを認めた判例じゃなくて、 <第三者Bにも手続保障をしろ>と請求するAの権利が、憲法31条により保障される権利の中に含まれるっていった判例だと考えている。
 このように、第三者にも手続保障をしろと請求する権利がAに保障される理由として、Bさんに
手続保障なしに没収した場合、Aは、Bから損害賠償等が請求されうる地位に立たされる。そういう立場に立たされないようにするためには、Aに<Bに対しても手続保障しろ>っていう権利が与えられるべきだし、所有者Bへの手続保障なしの没収は、Aに対して『適正手続』をしたことにならないからだと考えているようである。
 なお、平成21年の問題について、木村先生は、ブログのコメントで以下のような回答をしている。
 「原告としては、自己の自由権ではなく、自分が、国民の知る権利に奉仕するための権限を有する専門職であることを主張していきます。これは正確には、第三者の権利の主張適格の問題ではなく、そういう権能(権力)の独立がある、という議論です。」
 結局のところ、原告自身の権利に引き付けないとダメだと考えているようです。

2、判旨、補足意見、調査官解説を踏まえて、木村説の妥当性を検討する。
(1)多数意見
「第三者の所有物を没收する場合において、その没收に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。けだし、憲法二九条一項は、財産権は、これを侵してはならないと規定し、また同三一条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられないと規定しているが、前記第三者の所有物の没收は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没收せられる第三者についても、告知、弁解、防禦の機会を与えることが必要であつて、これなくして第三者の所有物を没收することは、適正な法律手続によらないで、財産権を侵害する制裁を科するに外ならないからである。」
 →ここまでが、第三者に対する権利侵害の違憲性を論じていると考えられる。
 以下で、第三者の権利侵害=原告の適性手続を受ける権利の侵害を論じていると思われる(妄想)。 
「そして、かかる没收の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没收の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没收に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、收益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。」
 この多数意見に対しては、木村説のように理解する見解の他、「被告人が単に他人の権利の救済を求めて上告した」と上告理由を理解してなされた判決だと分析する見解も多いようである(「憲法訴訟における当事者適格3」芦部先生助教授時代)。
 このように多数意見を理解するのならば、木村分類〈その3〉について、第三者の権利の主張適格を認めた判例と読むことになるだろう(妄想)。

(2)補足意見、反対意見等
ア、垂水克己裁判官補足意見
「第三者に対して~することによって、第三者所有物の没收は始めて憲法三一条の法定の適正手続によつたものといえるのである」と述べており、これは木村説の理解と同じ又は近いものであるといえる。
 もっとも、同補足意見は、「単に他人の憲法上の権利のみを援用して或る法律を違憲であると
主張する上告は不適法である」とのアメリカ的な発想を引用し、「被告人は自己の犯罪により附加刑としてではあつても、占有権だけを奪われるに反し、所有者は罪もないのに所有権剥奪という犯人にも勝る痛撃を受けない限りでもないから、被告人は彼に賠償する義務があることも当然である。いずれの場合にしても、被告人は自己の犯罪により没收を免れることはできない。被告人自身に関する限り、上告論旨は理由がない」と。これが法律に定めた手続による裁判かも知れない。」としている。
 本件は被告人が自己の権利に引き付けて考えるのは無理があるよね、との主張だと思われる(妄想)。
イ、下飯坂裁判官反対意見
(ア) 主張適格に関する一般論①
「具体的争訟事件の中において、自己に付き適用されない又は自己に合憲に適用される法令等を、他人に適用される場合、違憲になることの理由で攻撃し、違憲審査権の発動を促すことが許されるものであろうか。
 この場合、
(一)違憲審査の対象となる法令等により当事者が現実の具体的不利益を蒙つていない場合、
(二)違憲審査の対象となる法令等により当事者が現実の具体的不利益を蒙つている場合の二つ
に分けて考える必要がある。
 前者の場合、すなわち違憲審査の対象となる法令等により当事者が現実の具体的不利益を蒙つていない場合に、その違憲性についての争点に判断を加えることは、将来を予想して疑義論争に抽象的判断を下すことに外ならず、司法権行使の範囲を逸脱するものである。このことは、憲法八一条の下で裁判所に付与されている違憲審査権の行使として許されるものではないのである。 
 後者の場合、すなわち違憲審査の対象となる法令等により当事者が現実の具体的不利益を蒙つている場合に、その違憲性についての争点に判断を加えることの是非については後に言及することとする。」
→同反対意見は、第三者の権利を主張できるかどうかは、違憲審査の対象となる法令等により当事者が現実の具体的不利益を蒙つているかどうかという基準により判断すべきだと考えているようだ。自己の権利に引き直して考えるという点では木村説と同旨だが、木村説は適性手続の保護範囲の解釈をしているのに対して、同意見は具体的不利益(制約)に着目している点で異なるように思う(妄想)。
(イ)主張適格に関する一般論②
i アメリカ理論
「「法はその人に対する適用が合憲なものは、その法が他人に適用される場合、又は他の事実に適用される場合違憲になるだろうということを理由にその法を攻撃することは許されない」という原則であり、この原則の派生的な現れとして唱えられるものが「訴訟当事者は彼自らの憲法上の権利を主張し得るに止り、他人の憲法上の権利を援用することは許されない」という原則である。
 この原則は、
(一)自己の憲法上の権利を害せられた者が最もよくその憲法上の争点を裁判所に提起でき、自己の憲法上の権利を害されたものの攻撃がある場合に初めて憲法判断をすることにより適正な判決がなされる。
(二)援用される憲法上の権利の主体がその権利に対する侵害を甘受し、その憲法上の権利を抛棄するかもしれないのに先き廻りして、その権利が他人により援用された際に、憲法判断をするのは好ましくない。
(三)他人に法が適用される場合その他人の憲法上の権利が害されるといういまだ発生しない想像上の事実に基づき憲法判断をするのは好ましくない等の理由に基づくものと解せられる。
 アメリカ合衆国の最高裁判所は右のような態度で一貫しているようであるが、それは時の流れと経験とにより最も賢明なものであることが立証されたと言われているのである。」
 日本への輸入の可否、当否
「わが国においても、右の原則が賢明であり合理性の裏付をもつ考え方と思料するが故に、わが国でも裁判所が行う違憲審査については十分に右の点を考量されて然るべきであろうと思うのである。
 しかしながら、右の原則は憲法により裁判所に命ぜられた原則ではなく、むしろ裁判所が違憲審査権を行使するに当つての心構え、基本的態度を構成する原則と解すべきであるから、当事者により援用されている第三者の憲法上の権利が害され、且つ、その第三者がその権利を自ら有効に確保する手段さえももつていない場合には例外的に右原則は捨てられても巳むを得ない筋合のものであろう。」
(ウ)本件においてなすべきだった判決
「被告人は上告理由として没收の言渡の違憲を主張するが、被告人は没收の対象物の所有者たる第三者の憲法上の権利を援用しているに止り、被告人自身の憲法上の権利が侵害されたと主張していない。
 他人の憲法上の権利のみを援用してなす違憲の攻撃が許されるのは、その憲法上の権利主体が後にその権利を自ら主張することが不可能か又は後に主張したのでは実益がないという例外的場合に限られ、通常は他人の憲法上の権利のみを援用してなす違憲の攻撃は許されないと解すべきである。
 本件の場合は、没收物の所有者が後に自らその違憲を抗争することが可能且つ有効である場合に該当するから、被告人のなしている本件違憲の主張についての判断は必要でない。従つて本件没收について所論違憲のかどありとする論旨は結局理由がなく、採用のかぎりではない」との判断に到達すべきものであつた」
→同意見は、一定の場合には他人の憲法上の権利のみを援用してなす違憲の攻撃が許されると解している。これは、木村分類〈その3〉の類型においてイエスと言いうる場合があることを示しているものと思われる(妄想)。

第3、答案への反映方法の検討
1、問題点の整理
 木村分類〈その2〉と〈その3〉のどちらに引き付けるかという2通りの視点、及びそれぞれの分類において主張が可能か否かという2通りの視点。合計4通りの主張パターンが考えられる。
2、原告の主張
(1)パターン1
〈その2〉に引き付けて、原告には、~の権利が保障されているという保護範囲レベルで憲法上の権利を広めに解釈する。
(2)パターン2
〈その3〉に引き付けるが例外的に第三者の権利の主張が許される場合にあたると解釈する(答案上では、被告の反論を受けての自説ないしは再反論として検討すべきだと思う)。

3、論証パターン
【設問1】
保護範囲に含まれる旨主張(パターン1)、又は、この論点をシカトしてしれっと論じる。
【設問2】
(1)被告はまず、~の権利は原告の~の自由として保障されるものではないと反論する。
 かかる反論は妥当であると考える。なぜなら~自説。
(2)次に、被告は他人の権利を援用して主張することは許されないと反論する。
 そこで、以下検討するに、自己の憲法上の権利を害せられた者が最もよくその憲法上の争点を裁判所に提起でき、自己の憲法上の権利を害されたものの攻撃がある場合に初めて憲法判断をすることにより適正な判決がなされるから、原則として、当事者は自己の憲法上の権利のみを主張でき、他人の権利の主張はできないものと考える。
 もっとも、裁判所が違憲審査権を行使するに当つての心構え、基本的態度を構成する原則と解すべきであるから、一定の例外がある。
 具体的には…
 第三者の憲法上の権利が害され、且つ、その第三者がその権利を自ら有効に確保する手段さえももつていない場合には、例外的に第三者の権利の主張ができると考える(上記反対意見参照)。
 本件では…

なお、芦部説では、当事者の利益、第三者の権利の性質、当事者と第三者との関係、第三者が自ら権利を主張する機会の有無などを考慮するらしい(伊藤真の判例シリーズP398参照)
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Author:devilsadvocate(弁護士 若林 翔)
・平成23年新司法試験不合格(2300位)
・平成24年司法試験でリベンジできていることを願っていた
・同年司法試験合格
・66期司法修習生
・弁護士(東京都新宿区)
・選択科目は国際私法
・慶應LS(既習)卒業(2011年)

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